Films

by  Utayo Furukuni



香港映画というと、ドンパチ凄い、アクション超大作!(つまりジャッキー・チェンよ)というイメージがあり、この映画も然り?と思っていたが、その期待は良い意味でまんまと裏切られた。正直、トニー・レオンが見たい!この理由が大半を占め、劇場に足を運んだのだから。ウォン・カーウェイ監督作品『恋する惑星』で警官663を演じた彼を知り、彼の醸し出す雰囲気と、はにかんだ笑顔に、ほっと優しい気分になった。白いブリーフをはかせたら、誰にも負けないわ!なんて。(笑)特別に2枚目とか、スタイルがいいとか、そんなんじゃない彼の魅力が、警官663には満ち溢れていた。


そして今作『インファナル・アフェア』の潜入捜査官ヤンも、トニー・レオンしか演じられない役である!と、断言。憂いのある、どこか哀しげな表情に見惚れ、また、感情を自在に操る演技は、真に迫る緊張感があった。そして、画面に出てくる人物が男ばかり…というのも、この映画を更にシャープなものにしたと言えるだろう。これは正しい選択!危険が差し迫る男の色気が、そこはかとなく感じられて、スリリングな展開に拍車をかけた。潜入捜査官とマフィア内通者という立場が逆転した同士、追い込み、追い込まれ、息もつかせぬ心理的駆け引きは手に汗を握る。ラストに向かうにつれ、仏教的な善悪観念を場面場面で垣間見るのだが、ヤンの表情は、刹那的で痛々しいほど苦悩を帯びていた。そして訪れる衝撃の結末…。もう、たまらないほど、切なくなってしまう…。


おっと!トニー・レオンのことばかり書いてしまったが、マフィア内通者ラウ役のアンディ・ラウも、香港では押しも押されもせぬ大スター!だけど、トニー・レオンの方が全てにおいて勝っていたわ!なんて言ったら、ラウ・ファンに怒られてしまうか。(笑)


さて、この映画は、ワーナーブラザースがブラッド・ピットを主役に、ハリウッド史上最高額でリメイク権を買い取ったという。果たして、ブラッド・ピットが、ヤンとラウ、どちらの役を選択するのか?注目である。ただ、たっぷりおいしい役は、やっぱりヤンだろうなぁ〜。


また、個人的な意見として、この脚本の根底にある仏教観念が、西洋哲学(つまりキリスト教観念)風にアレンジされるのか、それとも、このままの形でリメイクされるのか、なかなか興味がある。でも、やっぱり原型脚本で制作を進めて欲しいけど、ハリウッドには無理か?(苦笑)何故なら、この映画が我々に問うテーマ、「人間にとって本当の無間地獄(映画の原題は「無間道」。この「無間道」とは「無間地獄」のことで、絶えることのない苦痛が続く地獄を言う)とは何ぞや?」を、ハリウッドがどこまで理解するか、しようとするか、全くもって未知数だから…。因みに、我々はその答えを、驚異のラストで見出すこととなるが、これには雷がどか〜ん!と落とされたような衝撃を覚えた。


最後に、トニー・レオンはウォン・カーウェイ監督の最新作『2046』に出演する。日本じゃ、この映画に出演する木村拓哉が世界進出!なんて騒いでいるが、何をおっしゃるうさぎさん!ウォン・カーウェイ作品には、やっぱりトニー・レオンがいないと!何はともあれウォン・カーウェイと撮影監督のクリストファー・ドイルは、俳優を美しく撮る、魅せる、最高のコンビ!今から公開が楽しみだ。


〔追伸〕香港ではあまりの人気に『インファナル・アフェア2』が公開され、現在、『インファナル・アフェア3』が撮影中とのこと。ここで気になるのは「誰が出演しているの?」である。だってトニー・レオンが演じたヤンは…なので。(ラストについては言えない!)私としては、彼が主演した『インファナル・アフェア』だけでお腹が一杯なので、公開されても劇場に足を運ぶか分からない。(笑)


2003-11-09
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